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上司への相談のポイントとコミュニケーション・スキル(7)

2021年08月07日

 これまで、近寄り難く、怖そうに見えた上司があなたのために、親身になって助言をしてくれる。

 それは、あなたが「状況説明」「質問」「傾聴」という、相談の手順を守っているからだ。

 もちろん、上司によって意見や助言の内容は違うし、「言い方」は、いろいろだ。それは、上司の判断や個性なので否定すべきではない。(ここで上司を嫌ったら、これまでの学習の意味がなくなる。)


 自分が望む助言でないから受け入れない、という考えは間違っている。

 上司に限らず、人の意見や助言は、あくまでも参考であって自分の判断を助けてくれたり、考えを整理するものなので、どのような意見や助言であっても、役立つものと考えよう。

 それでもあなたが不満なら、あなたが求めているものは、意見や助言ではなく「指示」なのだろう。要は、あなたは、「どうしたらよいのか」の答えを求めている。(または、自分の考えと同じ考えを相手に求めている。)

 それならば、最初から「指示してください」と言うべきだ。上司は、「相談」と言われたので、意見や助言をしたまでだ。

 「相談」と「指示」は全く違う。「相談」は、意見や助言を参考に、あなたが意思決定する。「指示」は、上司が決定しあなたが従う。

 相談している間に、上司から指示されることもある。上司を混乱させぬように、準備の段階で決めておこう。

 さて、上司から意見や助言をもらったら、判断する前によく理解しよう。そのために、(7)確認する。「理解力」を使おう。

 「確認」とは、はっきりと認めることなので、「意見」や「助言」のあいまいな点や疑問点を「質問」によってはっきりさせる。

 「相談」に対する上司の「意見」や「助言」は、あなたにとっての「問題解決」のヒントや解決方法なので、次の点を質問して確認する。

 「なぜ」、そうすべきなのか。そのために「どうしたら」いいのか。「なぜ」は、理由を確認する質問であり、「どうしたら」は、具体的な方法を確認する質問だ。

 「なぜ、そうすべきとお考えなのですか?」「そうすると、どんな結果が出るのですか?」「例えば、どんなやり方がありますか?」「どんな点に注意すべきですか?」

 「なぜ」「どうしたら」の2点を確認することで、より理解が進み判断しやすくなる。「問題解決策」は、そうすべき理由が明確で、現実的で具体的な方法でなければ実行できない。

 この2点の質問によって、あなたがよく理解したうえで決定すればよいし、参考程度の理解であっても、自分で更に考えて決定すればよい。

 実際には、「この方向で考えてみたら、どうか」「〇〇を調べてみたら、どうか」「具体的な方法は、自分で考えろ」など、おおまかなことを言われることもある。

 そうであっても、「なぜ」「どうしたら」の質問を使ってみよう。有益な情報が得られるかも知れない。  

 相談の最後には、「お忙しいところ、相談にのっていただき、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。」と言って締めくくろう。

《続く》次回は、まとめ編。

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上司への相談のポイントとコミュニケーション・スキル(6)

2021年08月06日

 部下から質問されたら、上司は答える。それが一般的な上司の態度だ。あなたが、きちんと手順を踏めば、必ず何らかの有益なリアクションがあるはずだ。

 上司が意見や助言をしている時に、あなたがすべきことは「傾聴」だ。

(6)傾聴する。「傾聴力」を使おう。

 研修では、「耳を傾けて聴く」とか「アクティブ・リスニング」といって「積極的に聴く」といった講義をする。

 上司は「話す」、あなたは「聞く」。それだけのことだが、「聴き方」を習得することで、上司とのコミュニケーションは格段によくなる。

 「人の話を聞いているのか?」「黙って聞け」「口をはさむな」「あなたは、いつも私の話を聞いていない」と言ったセリフは、コミュニケーションにおいてもはや慣用句だ。

 一方、聴く技術を習得すると、「聴き上手」「話しやすい」「話しているうちに考えが整理できました」といった肯定的な評価が得られる。

 決して難しくない「聴き方」の知識と技術は意外なほど普及していない。「注意される聞き方」ではなく「感謝される聴き方」をしよう。

 あなたが、「聴き方」の技術を使う目的は、相手がもっている質のよい情報を大量に収集して、有益な情報を得ることにある。そのために、「相手が気分よく話せる状況」をつくる。

〇積極的傾聴のポイント

①上司の目の前で、意見や助言をメモする。⇒上司の意見や助言を聴いていることを行動で示す。上司は、「部下は、自分の意見を受け入れているな」「忘れないように、ちゃんとメモしているな」と感じて、更に熱心に話そうとする。

②発言を遮らない。⇒上司が話している間は、静かに聞き続ける。話し手には、自分のリズムがあるし、考えながら話している。それを中断されることをとても嫌う。

 あなたの不用意な言動によって、話を中断されるとその瞬間に不愉快になって、話す気持ちを失ってしまう。

【話す気持ちを削ぐ言動】

 相手が話している時に、よそ見をしてはいけない。あくびをしてはいけない。いきなり意見を言い出したりしてはいけない。話の途中で反論してはいけない。無表情で聞いていてはいけない。相手をにらんではいけない。嘲笑(相手をさげすんで笑うこと)してはいけない。首をひねってはいけない。などなど。

 相手の話を否定しているように受け取られる言動やしぐさ。相手が気分を害するような言動やしぐさ。

 聴く時の態度は、「ノンバーバル・コミュニケーション」でも触れたが、無意識に出てしまうので、否定的な態度には注意しよう。

③肯定的に聴く。⇒上司は、「部下に受け入れられている」と思うほど、熱心に話そうとする。そのために、肯定的に聴く言動をする。

・上司が話しやすい距離で向き合う位置をとり、上司の目を見ながら聴く。

・話を聴きながら、時折うなずく。「(意識して)首を縦に振る」

・話の合間に、合いの手を入れる。「はい」「なるほど」「そうですね」「それは、いいですね」「それは、効果的ですね」「さすがです」

 とにかく、この段階では上司の意見や助言を否定せず全てを傾聴し、気持ちよくたくさん話してもらうことに、注力する。 

 疑問点の確認や反論は、次の段階でおこなう。

○それでは、今から話し相手を見つけて「傾聴」の技術を使ってみよう。きっと相手は気分よく、たくさん話してくれるはずだ。

《続く》次回は、(7)確認する。「理解力」を使おう。

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上司への相談のポイントとコミュニケーション・スキル(5)

2021年08月05日

 あなたが、きちんと状況を説明したら上司は、「状況は、よくわかった」となる。上司は、あなたの説明によって状況を理解してくれたので、しっかりコミュニケーションができている。

 次に上司は、「それで?」と言ってくる。ここからが、相談の始まりだ。あなたは、状況を説明したのだから、すぐに助言や指示がもらえると思うだろうか。

 あなたの状況説明が緊急事態であれば、上司はすぐに指示を出すだろう。しかし、そうでなければ、あなたが「質問」しないかぎり上司は、意見も助言も指示も出さない。

 (5)質問をする。上司から意見や助言を引き出すために質問しよう。

 上司への質問は、基本的な手順なので準備をしておけば大丈夫。質問の形式には、オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンがある。どちらかを選ぼう。

 自分が何をしたらよいか、全くアイデアがない場合は、「この状況で、私はどうしたらよいですか?」。これが、オープン・クエスチョンの例だ。

 上司にすべてを委ねて、上司の意見や助言を得るための質問だ。

 準備の段階で、いくつかの意見を考えている場合は、「私は、こうしようと考えていますが、課長は、どう思いますか?」「A案とB案で迷っているのですが、アドバイスをいただけますか?」といったクローズド・クエスチョンを使おう。

 自ら選択肢を示すことによって、相談者から意見や助言を引き出す質問だ。

 オープン・クエスチョンは、あなたにとって簡単な相談の仕方だが、上司から即答で指示を得られるとは限らない。状況を説明しているとはいえ、上司が正解の指示を即答することは難しいことなのだ。

 あなたが、上司に対してオープン・クエスチョンを使うということは、「自分で考えられない部下」と思われる可能性があるので注意しよう。

 クローズド・クエスチョンは、上司としては意見や助言をしやすい。しかし、それが最適解ではないかも知れない。上司は、あくまでもあなたの選択肢の中での意見や助言をしているからだ。「どちらかと言えば、B案だな。」

 クローズド・クエスチョンでは、「それもよいが、こうしてみたらどうだ?」と別の切り口から助言をもらえることもある。

 クローズド・クエスチョンは、あなたの意見を元に上司の意見を加えて、話し合いができるので、コミュニケーションとしては、より効果的と言える。

《続く》次回は、(6)傾聴する。「傾聴力」を使おう。

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そろそろ「内容」が問われる段階ではないか。

2021年08月05日

 プレゼンテーション研修をたくさんやった。アサーション研修もやった。

 人前で自信をもって話せるように。もっとわかりやすく伝えるために。責任をもった自己主張ができるように。

 あくまでも社員教育の範疇の話だ。自分の言いたいことをしっかり話せることが仕事をする上で、重要なスキルだった。

 研修担当者も、そう言ったし、人前で堂々と話せる人は少なかった。研修で準備をして練習した。その成果は、それなりにあった。練習をすればみんな、うまくなるのだ。

 時代とともに多くの人が自分の意見を言うようになった。そういう場も増えてきた。また、公に自分の考えや主張、気持ちを表現するツールや仕組みも飛躍的に増えた。

 結局、話すことや主張することは、「慣れ」なのだ。数をこなすことによって、度胸がつき技術が身についてくる。

 プレゼンテーション研修では、多くの人は、「うまく話したい」「わかりやすく話したい」といったHow to(どう話すか)を学びたがるが、重要なのは「何を(内容)」話すか、だ。

 「何を」を決めるのは自分自身だ。あなたは、一体何を言いたいのか。あなたは何のために、「それ」を言うのか。

 そこに、人の本質が見える。

 自分のちょっとした思いつきや、その時の感情をとても多くの人に、簡単に発信できる。ツールの使い方を知っていれば、自由に情報発信できるし、多くの人に影響を与えることができる。

 だけど、「それ」を言うのか。何のために「誹謗中傷」を発信するのか。

 その人は、自己主張の重要性も発信する積極性もツールの活用法も学んだが、「言っていいこと、悪いこと」の判断や発信する側の「責任」を、全く学んでいない。

 SNSは、実名も年齢も性別も職業などもほとんどわからない。匿名性が高いツールが多い。匿名が、「誹謗中傷」のハードルを下げるなら、匿名は禁止した方がよいと思う。

(※「誹謗中傷」のような他人を傷つけたり、迷惑をかけるような内容でなければ、匿名は全く問題にならないでしょう。)

 実名では、本音を言えないと言うのなら仕方がない。しかし、匿名だから、本当のことを言うとは限らない。重要な情報を収集できたとしても、匿名では裏取りもできないし、信憑性もない。

 メリットよりデメリットの方が多いのではないか。

 本来、自分の意見や主張は責任を伴う行為なので、実名が基本だ。実名は、自分が特定されて、その内容は責任が問われる。

 それを承知しているからこそ、よく考えて自分が納得する「内容」を、決心して発信するようになる。その経験が、本当のスキルアップにつながるはずだ。

 知識や技術だけを学ぶのではなく、発信することの「責任感」や「勇気」を学ぼう。みんな、たくさん発信するようになったから、そろそろ「内容」を問う段階ではないか。

 しかし、テレビで討論と称している番組の内容は、もう少し何とかならないか。

研修講師 新井 陽二

  


上司への相談のポイントとコミュニケーション・スキル(4)

2021年08月04日

 「課長、今、お時間よろしいですか?ご相談したい件があるのですが。」

 クッション言葉を使って、上司の了承を得たら 早速「相談」を持ち掛けよう。

(4)自分の状況を説明する。「説明力」を使おう。

 ①状況の説明は、「報告」と同じだ。「今、どのような状況であるのか」事実を簡潔に話す。

 (繰り返しだが、「相談の準備」の段階で資料を用意したり、説明のメモなどをつくっておけば安心だ。)

 特に、相談の前提となる「事実」をはっきりと話す。「活動記録」「実績」「顧客からのクレーム」「他部門の要望や主張」など。できるだけ、客観的に脚色せずに、時系列で順番に淡々と話す。 

 ※「相談」は、よくない状況の場合が多いので、「こんなこと言ったら、上司に怒られる。」と思うかも知れないが、自分の勇気を試してみよう。

 ②次に、どうしてこのような状況になったのか、自分の考えを話す。状況を一番わかっているのは、「あなた」だが真実を理解しているとは限らないので、あくまでも「推論」と理解しておく。

 「おそらく、〇〇が原因だと思います。」「こちらの対応が不十分だったのかも知れません。」

 ③最後に、今の状況を自分がどう思っているのか「気持ち」を率直に伝える。

 「絶対、目標達成したいです。」「このままでは、本当にまずいです。」「申し訳ありません。」

 ※真剣に考えて、自分でも「原因」や「理由」が分からない場合は、正直に「分かりません」と言おう。「気持ち」は誰にでもあるので、率直に思っていることを言おう。

 相談を受ける上司は、あなたの「真剣さ」や「誠実さ」、「勇気」「何とかしたい気持ち」を理解して、対応を変える。

 あなたの姿勢を理解してもらうのも、コミュニケーションだ。

 相談の前提となる「状況説明」は、「事実」⇒「推論(考え)」⇒「感情(気持ち)」の順番で、上司によく理解してもらう。

《続く》次回は、(5)質問をする。「質問力」を使おう。

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