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(2)なぜ、支店における不適切な融資が行われるのか?

2018年09月28日

(2)支店における不適切な融資

 ①副支店長が営業成績を上げるために支店長を欺き、不適切な融資を多数実行させ、多額の損失を発生させた。

 ②支店長は、融資先を十分に確認せずに融資実行を決裁した。

 ③同支店の他の職員は不審な状況を看過していた。

 ④副支店長は、過去在籍した別の複数支店においても同様の不適切な融資を実行し                

  損失を発生させていた。

≪Point≫

 上記要約から、本件のポイントは2点ある。支店内で発生した不正であること、事故者(副支店長)は、複数支店で同様の不正を行っていたこと。

・店長には、業務と部下を管理して支店目標を達成する責任がある。支店内で不正が発生した。ということは、管理が不十分であったといえる。店長の管理能力が不十分ならば、支店で不正が発生するのではないか。

・事故者は営業成績を上げるために不正をした。ということは、営業成績を上げている(上げようとしている)職員は不正をするのではないか。                     

・他の職員が不正を看過していた。すると、不正の発覚は遅れるので不適切な融資が多数実行され、多額の損失が出る。不正を看過していた理由は不明だが、支店の職員であるので店長の部下指導が不十分であったのではないか。ならば、部下指導が不十分なら職員は不正を看過するようになるのではないか。

・事故者は、複数支店で同様の不正をしていた。ということは、本件同様に管理能力の不十分な支店長が複数いるのではないか。ならば、会社は複数の管理能力の不十分な店長を育成・評価し、処遇してきたのではないか。

・本件の原因は、組織文化【遵法意識】【透明性】【内部統制】、経営管理【目標設定】【コミュニケーション】【チームワーク】【部下指導】【ストレス】【コンプライアンス】【評価】、人事施策【目標管理制度】【人事評価制度】【キャリア開発】の健全性要素に関係している。

・支店内の未然防止策は、店長の健全な経営管理が現実的な対策であり業務管理能力とともに、「人間力」が求められる。

・他の職員が不正を看過している、という点も支店の不健全性を表している。健全度調査の「所属別コード」で支店ごとの健全度がわかる。

・あと少しで不正が発生する「限界職場」が、見つかるかも知れない。 

≪続く≫
 


(1)なぜ、顧客の利益を害する業務運営をするのか。

2018年09月27日

 関東財務局は、検査・報告によって処分の理由として、4点指摘している。

(1)顧客の利益を害する業務運営
①複数店舗でサービス内容が不明または手数料の算定根拠が不明な融資実行手数料を徴求した。
②実質両建となる担保定期預金を顧客から徴求した。
③手数料の徴求が禁止されている制度融資の実行先から手数料を徴求した。

≪Point≫
・上記事実から、不正は「組織活動」として「日常的」に「業務」として「実行」していた。

・不正は「組織活動」として実行されていた。ならば、「上位者から方針が示され、直属の上司が判断し、部下に指示し、担当者が実行し、上司に報告し承認されていた」のではないか?

・ということは、「上位者が不正を誘発させる方針」を出さない。「直属の上司が不正を指示」しない。「担当者が不正を実行」しなければ、不正は起きなかった。

・組織活動として不正が行われる場合に、組織の構成員は同調行動を取るので未然防止は難しい。

・組織による不正は、さまざまな立場の職員が関与するので、その行動に影響を与える要素は多数ある。

・本件の原因は、3分野25要素のうちの組織文化【遵法意識】【意思決定】【顧客志向】【内部統制】、経営管理【コミュニケーション】【チームワーク】【部下指導】【活力・生きがい】【評価】【改善】、人事施策【目標管理制度】【人事評価制度】の不健全性にある。

・組織活動の不正防止は、不正に関与した職員だけでなく組織運営の全体を調査し、要素別の健全化計画を作成し健全化を進める必要がある。

≪続く≫

 


不祥事件が起きる予兆。

2018年09月26日

 東日本銀行の業務純益は、2011年から毎年減少していた。2016年4月に横浜銀行と経営統合した後も減少傾向は続いていた。

 横浜銀行は地銀最大手で、東日本銀行は事業規模も業績も見劣りする。

 経営者には下降している業績を回復しなければならないプレッシャーに加えて、グループ内(コンコルディア・フィナンシャルグループ)での評価を高めようと、強いプレッシャーを感じていたと、推測できる。

 「組織運営の健全化」を目的に、ノウハウ蓄積の手段として「企業不正」を研究している。

 企業不正の研究は、不正事例の研究が有効だ。事例(事実)から不正の原因を調べて一般化(仮説)する。

 多くのデータを収集し、仮説の汎用性が高まれば定説として広く活用することができる。仮説の段階では思い込みをもたず、どんなことでも「〇〇ではないか?」と考えてみることが重要だ。

 「業績が下降傾向で、経営者が他者との比較で優位に立ちたいと強く考えた時に、組織は不正を起こすのではないか?」

 ならば、業績は確認できるし傾向も予測できるので、事前に組織運営に注意することで未然防止することができる。

≪続く≫

 

 


業績と健全性の関係。【東日本銀行】

2018年09月23日

 業績は経営の結果で、組織運営は経営の過程なので因果関係にある。

 業績が悪化すると組織運営は不健全になり、限界点を超えると不正が発生する。組織運営が健全なら業績が上がり経営が安定する。

 2018年7月13日、関東財務局は東日本銀行に行政処分をおこなった。

第1.命令の内容

銀行法第26条第1項に基づく命令

(1)健全かつ適切な業務運営を確保するため、以下の観点から、内部管理態勢及び経営              管理態勢を見直し、強化すること。
  ⅰ 法令等遵守、顧客保護及び顧客本位の業務運営、経営管理にかかる経営責任の明                  確化

  ⅱ 法令等遵守態勢、顧客保護及び顧客本位の業務運営態勢の確立と全行的な意識の                  向上
  ⅲ 営業店及び本部関係部署における相互牽制機能の確立
  ⅳ 内部監査態勢の確立

(出所:関東財務局Webサイト)

 主な処分理由は、●融資に伴う不正な手数料の徴収。(全83店舗中、69店舗)●「歩積み両建て」による融資。(全83店舗中、50店舗)●複数の支店で、支店長・副支店長による不正融資。●投資信託販売における虚偽報告。

 「企業不正の研究」の分野の「不詳事件の再発防止」の検討は、なぜ、不祥事件が起きるのか(背景)、どのように不正がおこなわれるのか(過程)を調べて、どうしたら不正を防げるのか(防止策)を検討する。

≪続く≫


健全な組織運営とは。

2018年09月20日

 どのような組織も運営されてこそ組織の意味がある。組織運営の結果が経営の成果に表れる。組織は、「特定の目的を達成するために専門的な役割を持つ部門で構成されている集合体」と定義する。

 組織の運営はそもそも難しく、健全な組織運営は更に難しい。

 健全とは、人に例えれば心身ともに健康な状態だ。常に健康な状態を保つことは難しいだろう。人それぞれ体質があり、体調は日々変化する。年齢を重ねれば体力が低下したり、ケガをしたり、抵抗力が落ちたり、病気になりやすくなる。当然、誰しも寿命がある。

 しかし、自身の健康状態を知ることで、体調管理や疾病予防、体のメンテナンスでケガを防止することもできる。病気になったとしても、的確な診断によって効果的な治療を受けることができる。 

 組織も同じ理屈だ。組織における健全性とは、「構成員である社員が活き活きと働き、ルールを守って適切な成果を出している」状態だ。組織をできるだけ長生きさせることが「組織運営の健全化」の目的だ。

 ただの長生きではなく、健全な状態を長く維持させることが重要だ。組織は、不健全な状態になると「不祥事件(不正)」が起きる可能性が高くなる。重大な不祥事件は組織の寿命を縮める。

 人の健康が変化するように、組織の健全度も変化する。健全性をどのように測定し、維持・改善させるかが、「組織運営の健全化の課題」だ。


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