新入社員に、「働く心構え」をもたせることは、重要な課題だ。
キャリアの初期段階で、「働く」ことの意味と重要性を理解し、強い意識づけにより職場生活を充実させることができる。
上司や先輩から「やる気があるのか?」と指摘される遠因には、本人の「働く心構え」がある。先輩からすれば、「働く気があるなら、そんなことは言わないし、そんな態度はないだろう?」ということだ。(職場からの「研修に対する期待」だ。)
「働く心構え」をつくるには、どんな方法があるだろうか。「働いた経験のある者」が語る講義法がある。長く働き、深く考えた者が、経験を元にわかりやすく言って聞かせる方法だ。講師のキャリアが短いと説得力を欠き、長すぎると新入社員にとって現実味がない。
テキストを棒読みしても効果は期待できない。講師のキャリアと力量が問われるテーマだ。
「働く」のは、あくまで本人なので本人に考えさせる方法もある。今日では、働く理由は個人によって違うし、講師が説得するのもおかしな話だ。動機づけとしては弱い。
要は、自分にとっての「働くメリット」が整理できていれば「主体的に働く」はずだ。新入社員の中には何となく就活して何となく学校を卒業して、何となく働き始める者も多い。
「働くメリット」と「働かないデメリット」をよく考えていないのだ。だから、些細なこと(その時、本人にとっては重要なのだろうが)で、辞める。
「メリットとデメリット」は、比較法で考える。ワークシートの右側に「働くことにより得られるもの」を書き、左側に「働くことによって失うもの(学生時代に得ていたもの)」を書き出す。
両方の項目数と内容を比べて「働くメリット」を確認する。受講生によって数も内容も違う。右側が多く具体的であれば、働くことを肯定的によく考えている。左側に価値を感じるものが多くあれば、潜在的に学生時代に未練があり戻りたいと思っている可能性がある。(働く心構えができていない)
天秤の図で説明する。右側が重ければ「このまま働いた方がよい」。左側が多いなら研修中によく考え、「決心した方がよい」。
「働くメリット」が明確な者に発表させ、その理由を質問し、確認することでクラス全体を「働いた方がよい」方向にリードするファシリテーションを行う。
グループ・ディスカッションの後、「今、自分は働いた方がよい、と思っている人?」と問うと、ほぼ全員が挙手する。
そこから、「ならば、働くために必要なことを学ぼう!」と、研修を進める。≪続く≫