プレゼンテーション研修をたくさんやった。アサーション研修もやった。
人前で自信をもって話せるように。もっとわかりやすく伝えるために。責任をもった自己主張ができるように。
あくまでも社員教育の範疇の話だ。自分の言いたいことをしっかり話せることが仕事をする上で、重要なスキルだった。
研修担当者も、そう言ったし、人前で堂々と話せる人は少なかった。研修で準備をして練習した。その成果は、それなりにあった。練習をすればみんな、うまくなるのだ。
時代とともに多くの人が自分の意見を言うようになった。そういう場も増えてきた。また、公に自分の考えや主張、気持ちを表現するツールや仕組みも飛躍的に増えた。
結局、話すことや主張することは、「慣れ」なのだ。数をこなすことによって、度胸がつき技術が身についてくる。
プレゼンテーション研修では、多くの人は、「うまく話したい」「わかりやすく話したい」といったHow to(どう話すか)を学びたがるが、重要なのは「何を(内容)」話すか、だ。
「何を」を決めるのは自分自身だ。あなたは、一体何を言いたいのか。あなたは何のために、「それ」を言うのか。
そこに、人の本質が見える。
自分のちょっとした思いつきや、その時の感情をとても多くの人に、簡単に発信できる。ツールの使い方を知っていれば、自由に情報発信できるし、多くの人に影響を与えることができる。
だけど、「それ」を言うのか。何のために「誹謗中傷」を発信するのか。
その人は、自己主張の重要性も発信する積極性もツールの活用法も学んだが、「言っていいこと、悪いこと」の判断や発信する側の「責任」を、全く学んでいない。
SNSは、実名も年齢も性別も職業などもほとんどわからない。匿名性が高いツールが多い。匿名が、「誹謗中傷」のハードルを下げるなら、匿名は禁止した方がよいと思う。
(※「誹謗中傷」のような他人を傷つけたり、迷惑をかけるような内容でなければ、匿名は全く問題にならないでしょう。)
実名では、本音を言えないと言うのなら仕方がない。しかし、匿名だから、本当のことを言うとは限らない。重要な情報を収集できたとしても、匿名では裏取りもできないし、信憑性もない。
メリットよりデメリットの方が多いのではないか。
本来、自分の意見や主張は責任を伴う行為なので、実名が基本だ。実名は、自分が特定されて、その内容は責任が問われる。
それを承知しているからこそ、よく考えて自分が納得する「内容」を、決心して発信するようになる。その経験が、本当のスキルアップにつながるはずだ。
知識や技術だけを学ぶのではなく、発信することの「責任感」や「勇気」を学ぼう。みんな、たくさん発信するようになったから、そろそろ「内容」を問う段階ではないか。
しかし、テレビで討論と称している番組の内容は、もう少し何とかならないか。
研修講師 新井 陽二