不祥事件の発生は、予測できるか。

 不祥事件は、個人行動の結果でありその原因は個人にあると考えて、その個人が不正ができないように業務手順や手続きを改善したり、管理を強化することは無意味ではない。

 しかし、これらの対策だけでは、不正をやろうと思った時、人はやる。人が作った仕組みは人が破ることができる。

 もう一つのアプローチは、「不正をする気にさせない」「不正を思いとどまる」対策だ。

 個人の行動は本人の意思や能力、意欲だけで決定されるわけではない。組織における行動は、個人以外の要因が強く影響を与える。組織は、構成員によい影響も悪い影響も与える。

「潜在的不正発生可能性診断」とは、89項目に回答することにより所属別の不正要因の割合を診断報告します。 

 89項目には不正のトライアングル理論の3要素が質問項目に設定されており、コード別に「動機」「機会」「正当化」のデータを収集できます。つまり、ある営業店における「不正せざるを得ない」「不正はできる」「不正してもよい」と思っている職員の割合を出すことができるのです。 

 所属別の「潜在的不正発生可能性ランキング」は、所属長にとって大きなインパクトがあります。 

 大事なことは、調査データを活用して信用金庫・営業店の健全化を促進し、不祥事件を未然に防止することです。報告書には健全化のための具体的な提案も盛り込まれています。

 内部管理体制の強化で業務手順や手続きが複雑になり、書類が増え、管理業務が増え、職場はますます仕事がしづらくなっています。 

 不正防止のためにはそれも必要ですが、もっと前向きな“不正をする気持ちにならない信用金庫づくり”の取り組みも必要ではないでしょうか。

 本調査が依頼される場合の多くは、残念ながら“不祥事件が起きてから”なのです。しかし本来は、不正の芽を事前に摘む、未然防止に効果的な調査です。

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