コーチングが成功する条件の一つは、マネジャーのコーチングスキルにある。コーチング研修では、「質問のスキル」「傾聴のスキル」「確認・承認のスキル」を習得する。
コーチングは、マネジャー養成の研修体系のコミュニケーション研修の上位研修に位置づけた部下指導研修の中で、指導法の一つとして学習する。
もう一つの条件は、部下の成熟状況にある。スペシャリストの成長過程における企業人としての成熟状況のことだ。マネジャーに対する敬意ある態度、質問に対して真剣に考える姿勢と能力、真摯に答える姿勢が身についていれば、マネジャーのコーチングはうまくいく。
スペシャリストは、特定分野の専門性をもつ、これからのビジネスパーソンの姿だが、プロ・マネジャーと同じように成熟に時間が掛かる。長い職業人生を通して専門分野を深めていく。
しかし、組織で働く以上、専門分野とは別に企業人の基本を習得しなければならない。チームで協力して働くことができる能力がなければ専門性も活かせない。
新卒のスペシャリスト・コース選択者に基本行動を教えるのはリーダーの役割だ。当面は、アシスタント的な業務を担当しながら、組織で働く基本行動をリーダーから学び、専門分野を選択しながらスペシャリストを目指す。
マネジャーのコーチング対象者は、一定のレベルに成熟したメンバーだ。自律の意識があり、ある程度の経験があり、自ら考える力があり、マネジャーに対する態度を身に着けた者を対象とする。
コーチングは、汎用性の高い指導法だが、条件を整えることで、より効果を発揮する指導法である。